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GROUP STUDY EXCHANGE ROTARY DISTRICT 2650

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G.S.E.プログラム(イギリス)を終えて

塚本淑未(和菓子屋勤務)

はじめに


「海外に1ヶ月いってみないか?」
2006年春、会社の会長にこう声をかけられた。
2006年秋、今プログラムが終わりここにいる。
今私の中に確実に、今までなかった考え、経験がある。

交換先がイギリスだと聞き私はすぐに参加したいです、と答えた。前々から興味があった国の一つであった。私の好奇心、興味、そして今後の会社における自分のステップアップに繋がるのではないかと考えたからである。

しかし私は今までほとんど日本を出たことがない。福井で生まれ、福井で育ち、自宅すら一週間以上出たことがない私が務まるのだろうか。不安と期待とで複雑な気持ちで重いスーツケースとともに福井を出た。

天候

約13時間のフライトを終え、飛行機から降りた私たちを待っていたのは思っていた以上に寒いイギリスの気候だった。日本と同じくらいの気候だろうと少したかをくくっていた。夜だったこともあるが、必ず一枚下に着ようとその日から心に決めた。

イギリスは雨がよく降ると言われる。幸運なことに私たちは曇る日は多かったが想像していたより雨にあうことはなかった。イギリスの雨は日本の雨に比べて細かい。シャワーのような雨だった。雨にあってもべたべたになることがあまりなく、イギリス人はあまり傘を持たないように感じた。ただしレインコートはみんな持っていた。

そして風も強い。Portlandでライトハウスに行った時、海ということもあったが、風が強くて前を歩くのも必死だった。いろんな写真を見ても風で髪が乱れているものばかりである。

街並み

イギリスの街並みはとてもきれいだ。そして多くは何百年も前に作られたものだ。日本は木造が多いので何百年級の家を見るにはお寺などに行かないと見られないし、痛みも激しい。

しかしイギリスでは普通にこういった年季の入った家をリフォームして暮らしている人が多い。しかも全く気づかないぐらいきれいだ。そしてセキュリティがしっかりしており、外出する際は必ず暗証番号を入れるタイプの鍵をかける。家にいたとしても鍵は常にかけ、開けるときでしか鍵をはずさない。

私の住んでいるところは、外出する際には鍵をかけるが、家にいるときはあまり気にしている人は少ないのではないかと思う。自分の無用心さを少し恥じた。

それから家々は景観を乱さないように建てられている。そしてなんといっても自然が多い。経済大国なのでくちゅくちゅしているのかと想像していたが、訪れた地区はのどかなところが多い。広大な土地にたくさんの牛や馬、羊が放し飼いにされていた。

そしてボランティアの人たちによって、歴史的建物は保護、補修され、今もなお昔の姿のまま残されていた。何百という歴史的建造物はイギリス全土に存在している。

紅茶

イギリスといえば紅茶! というがやっぱりイギリス人はみんな紅茶を飲んでいた。目覚めに一杯、朝食に一杯、お昼前に一杯、お昼に一杯、おやつに一杯、夕食後に一杯、寝る前に一杯・・・おまけにミルクと砂糖もたくさん入れて・・噂どおりであった。圧巻。

私も大概紅茶が好きだがこんなに飲むとは予想だにしていなかった。イギリス滞在の間、クリームティを3回体験した。これはイギリスの伝統的なアフタヌーンティの一つであり、スコーンにたっぷりのクリーム(バタークリームの甘みがないようなクリーム)とストロベリーやブルーベリーなどのジャムを塗って紅茶といただくというものであった。

そして紅茶を作る際、マザーと呼ばれる亭主がいる。マザーが同席する人の紅茶の好みを聞き、(砂糖はいるか、ミルクは紅茶の先にいれるか後に入れるか──これは議論ができるほどイギリス人には重要な問題らしい)お茶をいれ、配る。

私は茶道を習っているのだが、茶道も亭主がおり、同席する人のためにお茶を立てる。お茶をいれて人をもてなすという点では通じるものがある。大きく違うのはそのお茶とともにおしゃべりを楽しむことだ。茶道では静かにお点前を拝見し、お茶とお菓子をいただき、器を拝見し、目で感じることが多い。こちらでは食べながら季節の話をしたり、互いの世間話をしたりしてこの時間を楽しむ。

一般的に茶道はとても特別な空間であり、日本人でも日常的によく行うことではないが。日本から茶道の道具一式を持っていっていたので、ホスト先の方にお茶を時々たてた。まず持ってきた道具一つ一つに興味があるようで、これはなんだとよく聞かれた。そして茶筅を見て、なぜお茶をかき混ぜるのかがわからないようだった。

イギリスでもgreen teaを見かけることはしばしばあったが、別のお茶とブレンドされていたり、緑茶の渋みがあまり出ていないものが多かったり、日本で見かける緑茶とはまた違うものであった。なので私が持参した抹茶を見てとてもびっくりしていた人もいた。

味はどうもイギリス人の口には合わないようでとりあえずうなずくだけの人を多く見かけた。茶道のよさを伝えるのは私のつたない英語では非常に難しいことであった。

Chippenhamでは格式あるホテルでアフタヌーンティを戴く機会があった。席に着き待つこと数分。私たちの前に現れたのは想像をはるかに超えたアフタヌーンティだった。先に紅茶が来て、そのあとサンドイッチにスコーンにケーキが5種類。お昼ごはんもまだまだ消化し切れていない17時の胃袋にはかなりの任務であった。結局食べきれず持って帰ったが、その夜のミーティングでは料理に手を出せなかったのはいうまでもない。

DorchesterでのホストのRoseが私に見せたいものがあるといってあるものをみせてくれた。木製の箱のこれはTeacaddyと呼ばれるもので、昔紅茶がとても高価だったとき、茶葉をこの箱に入れて鍵をかけて大事に保管していたそうだ。この品は彼女のおばあちゃんのおばあちゃん(約18世紀頃!)が持っていたもので、中にはスプーンが入っており、時計の絵がかいてあったり、ハート型だったりとてもかわいらしく、しかもどれをとってもきちんと保管している様子が見られ、それを私に見せてくれたことがとても嬉しかった。

食事

日本にいたときからイギリスで有名な食べ物は? と聞かれても正直思いつかなかった。出てきたところでスコーンだろう。イギリスは朝からボリュームのある朝食を取る。English breakfastといい、スクランブルエッグやベーコンやトマト、ソーセージ、豆などがワンプレートで出され、トーストと一緒に食べる。全く見慣れないものではなかったので躊躇することなく食べることができた。

滞在している間よく食べたのがローストビーフであった。いろいろな野菜をのせ、グレービーソースをかけて食べる。とてもおいしかった。私は日ごろあまりフォークやナイフを使わないので、非常に苦戦した。中でも苦戦したのはグリンピ-スである。日本で見かけるよりももっと小さいもので、なるべくフォークナイフを使って食べようとしたが、結局はフォークを右手にもちかえて食べた。

慣れないフォーク、ナイフに戸惑っていたこともあるが、それ以上にイギリスの人たちは食べるのが早い。あっという間に食べ終わり、話し始める。きっと日本だったら食事中だったら箸をとめて話し始める。だから食べ終わるのが遅いのであろう。

イギリス人は早く話しをするために早く食事を済ます。これが彼らのステータスではないかと思う。それからよくワインを飲む。よく聞かれたのは「赤か?白か?」だったと思う。

私はビールを嗜むほうなので、ビールというと多少驚かれることがあった。日本では「とりあえずビール」といわれるほど、ビールの方が多いがイギリスでは「とりあえずワイン」だった。

Wellsでサイダー工場に行くことがあった。日本で飲むあの透明な甘い炭酸水を想像していたので「Doyou like Cider?」と聞かれたとき「もちろん」と即答した。そのときとても驚いた顔で私を見たので疑問に思ったが、理由は工場についてすぐにわかった。

工場に着くと発酵したにおいがして、よく考えるとりんごが発酵しているにおいであることに気がついた。どうもイギリスでいうサイダーはりんごを発酵させたお酒のことで、私たちが日本で目にするサイダーとは違うものであった。アルコールは約6〜7%。とても飲みやすかった。

宗教

何度か教会につれていってもらったことがあった。何百年も前の建物であったり、とても小さいものであったり、由緒ある建物であったり、どれも興味深いものであった。

日曜日にはみんな街の教会にいって祈りを捧げ、歌を歌いに行くそうだ。日本にはこのような行事はない。私は仏教徒である。厳密に言えば、仏教徒ということになっている。

とあるホストファミリーに日本の結婚式について聞かれたことがあった。白い着物やはかまを着て日本伝統のやり方でやる人もいるが、最近は教会で挙げる人のほうが多いと思うと答えた。するとなぜ仏教徒なのに教会で挙げるのか聞かれた。うまく答えられなかった。

私たちは仏教徒ではなく、無宗教者と答えるほうが正しいのかもしれない。確かに日本の文化は複雑に多文化と絡み合って存在している。もし切り離してしまうと成り立たないのではないかとさえ思う。

私は今まで自分が信仰している神について深く考えることがなかった。なのでこんなに宗教を熱く信仰している人たちはすごいと思う反面理解できない自分もいる。しかし彼らはとてもキリストを崇拝していることはとても感じ取れた。誇りを持ち、キリストの教えが誰でも説明ができる。そこにはとても感心した。

リサイクル

ステイしていたホスト先ではゴミの分別を求められた。日本でも当たり前になっている分別。イギリスでは週二回、各家庭が家の前にゴミを出しておけば回収車が取りにくる仕組みになっていた。

Tauntonではゴミ処理場に行った。ここでもゴミは分別され、しかも日本よりももっと細かくビンが分別されていた。WeymouthでのホストのAlexがリサイクルショップに連れて行ってくれた。使わない家具をもらい、修理して格安で欲しい人に売る。そのお金はチャリティになる。

日本人はチャリティに興味があるかと聞かれた。毎年夏に募金を募るテレビ番組があると答えると、Alexはとても嬉しそうに笑った。彼は貧しい国で親もなくし、働くにはまだ小さい一人の少年の援助をしていると言った。会ったこともなく、別に知り合いでもなく、ただ写真で見ただけの子である。

彼が大きくなり働き出せるまで、彼の身の回りのことなどの支援をするという。PortlandのホストTomも別の子の支援をしていると言っていた。まさしくロータリーの絆を大事にしている人たちだなと感じた。

ボケーショナル

私は和菓子屋で販売員をしており、今年の5月から百貨店に入っている支店の店長をしている。この和菓子というジャンルはとても難しいもので、まずイギリスにはこのジャンルがない。位置づけするところがない。そして和菓子を説明するにしてもあんこが存在しないので伝わらないことが度々あった。

悪くなるものなので実物を持っていくわけにはいかず、その代わり写真をもっていった。できる限りあんこを英語で伝わるように日本で訳してきたが、うまくいかないこともあり不完全な思いも正直ある。それでも一生懸命理解しようとして、私にあった職業訓練を探してくれたことにとても感謝している。

Yeovilにいったときに地元の百貨店のDennersを訪問した。お客さんに親身になって話をしているのが印象に残った。ただ日本人的視点だが、お客さんにお礼をしないことにとても違和感を感じた。お礼がイギリスにはないものだとわかっているがなんだか敬意がみられないようだった。日本のほうが店員とお客さんの間の位置づけがはっきりしていると感じた。

Portlandでは朝から百貨店で実際に働かせてもらう機会を得た。私が担当したのはお菓子とおもちゃのフロアーでまだ10月の初めだというのにハロウィーンを飛び越してクリスマスムード一色だった。店にはクリスマス用のおもちゃやお菓子が所狭しと並べられ、平日にもかかわらず多くのお客さんが来店していた。

そこで店員が使っていた機械にとても興味を持った。アンテナから赤外線が出て、バーコードを読み取る。これで値段の設定や在庫を把握するという。上の階はたくさんの商品が置いてある倉庫があった。ここは機械で管理されていないので商品を探すのはとても大変そうだった。

管理すればもっと人件費も抑えられるのではないか思った。昼からはお菓子の補充を手伝った。Pic'n mixというのがイギリスのどこのお菓子屋に行っても見受けられる。決まった入れ物に自分の好きなお菓子を自分で選んでいっぱいになるまで入れることができるというものだ。日本でもところどころある。チョコレートやキャンディ、ガム、グミ。たくさんの量があってなかなか覚えられなかった。

イギリスでは子供はともかくおじいちゃん、おばあちゃん、男の人もうれしそうにお菓子を選んでいた。和菓子屋にはこういった形態はないがもしあったらもっと人々に近い存在になれるのではないかと思った。

TauntonでMilesという地元では有名な紅茶の工場に行った。正直私はここに行くのがとても楽しみでわくわくしていた。Milesは高級な紅茶らしく、ホテルなどでしか売っていない紅茶だそうだ。まずお茶をテイスティングする部屋を案内された。

たくさんの茶葉があり、どこに何があるかもわからないくらいだった。テイスティング用に6種類のお茶が用意されていて日本からきたということで、玄米茶も用意してくれていた。

初めてテイスティングに挑戦する。プロの人はまず匂いを嗅ぎ、口の中で何度か味を確かめ、飲まずに捨てる。私にはとても高度すぎてできなかったが、私の好きな味とイギリス人の好きな味が全く違ったのでちょっとした文化の違いを感じることができた。

私が茶道をしていることを知ると会社の責任者の方が興味津々に茶道で使う抹茶について聞いてきた。説明するとお茶がパウダー状になっているということにとても驚いていた。彼らはお茶は全て茶漉しで漉したりパックに入っているものだと思っていたようで、お湯をいれると溶けて、かき混ぜるということに驚き、興味を示していた。

実際に商品を作る工場も見せていただけた。いろんな種類の紅茶をブレンドし、パックし、袋詰めにする作業は、多くは機械だったが、パッキングや包装は人の手でやっていた。

私はてっきり全工程が機械だと思っていたので驚いた。だから作る量も大量生産ではないのでホテルなどにしか置かれないのであろう。そうすることで少なからず付加価値が付いているのだと思う。ちょうどクリスマス用の商品をラッピングしていてお菓子いれて包装していた。ここでもお茶とお菓子は切れない関係のようだ。

最後に

一ヶ月という期間はあっという間に過ぎ去り、出発した頃抱えていた不安はいつしか消えてしまった。これも私を暖かく迎えてくれた9つのホストファミリー、コーディネーターの方々のおかげであることには間違いない。

私のつたない英語で何度も彼らにもどかしい思いをさせてしまった。そして私も自分の思っていることの半分も伝えられなかったことに対するもどかしさ、思っていることを相手に伝える難しさ、そして大事さを改めて知った。

「Another day, another place」Weymouthのホストが教えてくれた言葉。いつか彼らにもう一度会いたい。一ヶ月一緒に行動を共にして、いろんな話をしてくださったリーダの山本さん、そしてメンバーの2人。

自分の直さなきゃいけないところ、真似したいところたくさんのことを学んだ。今回のプログラムで私が得たことは気のきく人間になるということ。相手が何を欲しているか、どうしてあげることがよいのか、常に考えてあげられる気持ちの持ち方が大事だということを学んだ。

サービス業である私の仕事にも通ずることである。そしてなんといっても感謝してやまない会社の方々。支店の店長である身なのに一ヶ月も開いた穴をきちんと埋めてくださった。すばらしい機会を与えてくださった社長、会長。誰よりも体の心配をしてくれた家族。推薦してくださった福井北ロータリークラブの方々。みなさんの支えがなければ私の中にある貴重な経験は存在しない。

最後に私にたくさんの考え、冷静になる時間、自分を見つめる事を与えてくれたイギリス。いつかまた訪れることを夢に見ながら、イギリスでのお茶とお菓子の関係に私が販売している和菓子が少しでも近づけるように私も日々精進していきたい。

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