
GSEプログラム体験記(ウエストバージニア)
はじめに
GSEプログラムに参加したきっかけは尊敬するロータリアンからの言葉でした。私は指圧を生業としているのですが、プログラム内容を聞いて、私の頭の中には、ホリスティック医療について交流してきたいと即座に浮かびました。
京都モーニングロータリークラブより推薦を頂き、派遣されることが決まり、月一回の研修を通して、次第にGSE団員としての自覚が強くなりました。
一人旅に慣れている私が、チームの一員としてプログラムに参加する事、また数ヶ月のホストファミリー宅にお世話になることなど、どんな展開になるかしら……と思っている間に出発の日がやってきました。
私達の出発とウェストバージニア(以下WV)団員の帰国が同じ飛行機便に、委員会の粋な計らいで実現しました。お陰様で、WV滞在中の彼らとの再会は深い喜びでした。
プログラム中の目的として、職業交流の他に、人々の暮らし、文化や習慣をあるがままに受け入れ共有してきたいと思っていました。また、私は山歩きやハイキングが大好きなので、山の州と呼ばれるWVの景色を目の当たりにすることや、本場ブルーグラスを聴くことなども心待ちにしていました。
滞在中の移動スケジュール
Morgantown到着→Weirton→Parkersburg→Morgantown→Wheeling地区大会参加→Spencer&Charleston→Elkins→Clarksburg→Morgantown→Washington,D.C.→Morgantown出発
各地にて例会と地区大会に参加し、14回のプレゼンテーションを行いました。
人々の暮らし
アメリカのロータリアンということで、皆さん、大きな敷地と家を所有されています。夫婦共働きの家庭は、家事も育児も協力しあって行っているという印象を受けました。
私のホストファミリーは、アメリカに移住して2世代、あるいは3世代目の方々で、先代の移住当時の苦労話し、自分達の現在を築いてきた歴史なども語ってくれました。
その際、アメリカについて、「努力して一生懸命働いた分だけ得るものがある。アメリカには自由と可能性がある」と誇りをもって話される場面に幾度かあいました。また、自分のルーツを調べたり、ルーツを巡る旅をされている方も多くありました。アメリカという国、そしてアメリカの歴史を感じる一齣でした。
また、アーミッシュの村も訪れました。数百年前から変わらない暮らしを続ける人々。馬車を使い、一様の服装をし、強い信念と祈りが感じられる暮らしに、私は随分前から引きつけられています。
大農場で馬と共に働く姿、スカーフと帽子を身につけ校庭を走り回る子供達、独特な訛りのある英語で(私は独特な日本語訛りですが)接客をしてくれた恥ずかしそうに微笑む女の子、手品を見せてくれた大きな髭面の男性……現代文明や流行に流されない暮らしが色濃く私の脳裏に焼き付いています。
訪問した施設
ロータリークラブの多種多様な繋がりを通じて多くの貴重な訪問をしてきました。個人で、または団体であってもなかなか訪問できないような施設を、しかも案内付きで!その中の幾つかを紹介したいと思います。
- 1:公共施設
- 州議事堂、市役所、裁判所、警察署、学校、病院、博物館など訪問しました。
- この写真は、州都CharlestonにあるWV州議事堂内にある裁判所の判事席に座っているところです。滅多にお会いできない超多忙なWV州知事との写真撮影もできました。また、Spencerでは、弁護士をしているホストファミリーの好意で、養子縁組成立の裁判の傍聴をさせてもらいました。家族全員の笑顔が輝いていました。
- WV州立大学のあるMorgantownでは、職員さんのガイド付きでキャンパスツアーをしました。ディズニーランド内を走るリニアモーターカーの試験用として誕生したPRT(Personal Rapid Transit)で構内を移動できます。この町の人口は3万人の住人と2万8千人の学生から成り立っています。数年前、「全米で最も暮らし易い小さな町」に選ばれ、アメリカの失業率8%に対して2%、犯罪率も非常に低いとのことです。驚いた事に、家の鍵をかけないロータリアンが沢山いました。「何十年も鍵をかけてないし、心配要らない」と皆さん口々に言われました。世界の中でもトップレベルのヘルスケアシステムが整い、豊富なネネルギー資源に恵まれ、人口と雇用数が増加している希少な町であると誇らしげに語る人々。その理由の一つに、市内にある大きな製薬会社MYLANの巨大工場が頭に浮かびました。
- 人口2500人の町、Spencerにある公立高校は700人の生徒数です。山間の幾つかの小さな町から通う多くの学生が車通学しており、学校で運転免許の講習会が行われています。障害を持つ学生達の教室には、ソファーやテーブルなどの家具があり自宅のような部屋になっていました。ここでは、普段の暮らしの中で、自分にできることを増やし、且つより円滑に行えることを目的に過ごしています。卒業生の写真が廊下に飾ってあるのですが、日本人の名前も数人見つけられました。交換留学生とのことでした。全米で学生出産率の増加が問題となってきている近年、学業中に子供を預かる施設のビジネスが至る所で広がってきているということも聞きました。
- 旅の最後にはWashington,D.C.に2泊3日で訪れました。ホワイトハウスやメモリアルタワー、リンカーン記念像、戦争碑など観てきました。これらの建造物は、静かに重厚にアメリカの歴史を語っています。トローリーツアーという観光バスを夜に利用したのですが、闇夜の中で見る建造物は、また違った様相で美しく、そして、強く心に響いてきました。
- 2:その他の施設
- イタリアからの移住者が95%以上を占めるClarksburgでは、FBIに行ってきました。私の人生とFBIが繋がるとは!! 驚きと好奇心一杯で見学してきました。指紋照合と銃規制を行う部門の案内をしてもらいました。指紋照合では、意外にも、未だ肉眼で4割程行っています。指紋の押し具合で機械では読み取れないものがそれだけ多くあるとのことでした。
- 機械を導入して作業スピードは倍増ですが、やはり機械は機械。肉眼で指紋を見続けている女性達の目の疲労度が心配になり伺うと、やはり……かなり疲れると笑って話されました。
- 銃規制については、レーガン大統領暗殺未遂事件以降、規制に関する法律がかなり強化されたようです。WVの法律では、購入するには、ピストル21才以上、ライフル類18才以上という年齢制限があります。しかし、狩猟文化の根付いたWVでは、より若い年齢で銃を触る機会は多いとのことでした。また購買時期の統計図を見せてもらったのですが、他の買い物と同様、クリスマスやサンクスギビングデーの前後、週末に銃を買う人が圧倒的に多かったです。
- FBIの後には、テレビ放送局を訪問し、ニュース生放送の見学、番組の最後には一瞬の番組登場もしました。画面に映らないとはいえ、ニュースを読んでいるメインキャスターの横の席に座ったり、お天気キャスターとお話ししたりと現場の大らかさ、ユーモアさにアメリカという国を感じました。
ホリスティック医療について
職業交流として、理学療法士、マッサージ師、カイロプラクター、作業療法士、カウンセラー、フィットネス業界の方々との交流や、自然食品店に行ってきました。
ホリスティック医療についての率直な感想は、人々の要望や関心は高まりつつあり、医療現場にも浸透し始めたところという印象を受けました。私が出会った医療従事者の全員が少しずつだけど確実に広がってきているという手応えを持たれていました。
私が、現在、日本で感じているのと全く同じです。アメリカは大きな国ですから、州によって、ホリスティック医療への関心度の違いは大きいということは、プログラムが始まる前から知っていました。人々の代替医療に対する意見として、興味はあるけど利用しづらい、その理由としては、値段が高いことや、代替医療について知る機会が殆どないということでした。保険適応の代替医療もここ数年で増えてきていました。ただ、アメリカと日本の保険制度は随分違い、一概に保険適応と言っても、加入している保険内容によって異なります。
東洋医学については、殆どの方が興味を示されました。経絡やツボの話しにも皆さん興味津々。馬に鍼治療をしているという馬主さんの話しも聞きました。馬に鍼とは土地柄ですね! 数人に指圧をする機会もあったのですが、皆さんとても喜ばれ、指圧クリニックの新規ビジネスの打診を受けた程です!
自然食品店で私が好きなことの一つは、量り売りをしていることです。選りすぐりの品々が見え易く陳列されています。サプリメント文化のアメリカ、サプリメントの品数にはいつも圧倒されます。これらのお店では、健康や環境などについての講習会も行われています。
文化交流・交換
- 1:Parkersburgで初めてのATV(四輪バギー)ツアー
- 他メンバーのホストファミリーの所有地内をATV(ヤマハ)で駆け抜けました。端が見えない程の広大な敷地面積。鹿やターキーの狩猟もされています。敷地内を流れる小川付近では、昔の槍を時々見つけるとの事で、その一体が、ネイティブアメリカンの狩猟場だったことを物語っています。
- 2:Elkinsで蒸気機関車に乗る
- アパラチアン山脈の麓を走る蒸気機関車。小川に沿って線路が走り、水と森と風、そして汽笛を全身で浴びてきました。チームリーダーは操縦のお手伝いもしました。
- その他、各地で、ハイキング、美しい景色を眺めながらのドライブ、念願のブルーグラスの生演奏、スチールアーティストの工房などなど盛り沢山でした!
- 3:日本文化の紹介(着物・お茶・歌)
- ロータリークラブの例会や地区大会のプレゼンテーションでは、可能な限り着物で出席しました。メンバーの塩出さんは本物の着物、私は二部式着物にて。着物について多くの方の質問を受けたり、近くに寄って触られたりと興味を持って頂きました。
番外編──アメリカのハイテク?事情
1:台所編
- *流し台の排水溝から生ゴミ処理
- 大きなものは流しませんが、果物の皮や小さな生ゴミは電気仕掛の排水溝に押し込みスイッチオン。まるで生き物の口から体内へ消化されるかの様に生ゴミは姿を消すのです。その行く末は……。
- *圧縮機能つきゴミ箱
- 入れても入れても圧縮されるゴミ。かなりの量が入ります。分別している家庭はいませんでした。
- *熱湯の出る蛇口
- 温水と冷水が出る蛇口の横に別の蛇口が。お茶などを飲む時、マグカップを口に当ててつまみをひねると、出てくるのは沸騰したお湯。多くのホストファミリーは便利で大好きと喜んでいました。
2:車編
- *シートが温かくなったり冷たくなったり
- 車全体の冷暖房は普通ですが、個々のシートのお尻と背中の部分を単独で温めたり冷たくしたりできるのです。
- *車内蔵の電話
- 携帯電話ではなく、車に備え付けられた電話。GPSの下、道に迷った時にはナビゲーションしてくれるというもの。また、車の盗難にあった時には居場所が直ぐに分かるということでした。
3:おまけ
- *タオル乾燥機
- シャワーの外にパイプ状のタオル掛け。電気をスイッチオンでパイプが温かくなり、シャワー後に使うタオルはホカホカ状態に。こちら所有されていたホストファミリーの方も殆ど使わない贅沢品と、顔を見合わせて大笑いしました。
- これらのハイテク発見に驚くと、日本のハイテクも指摘されました。 それは……トイレでした!!
おわりに
このGSEプログラムを通して最も感動したことは、出会う人々のやさしさと温かさです。ロータリークラブで長年に渡り築かれているGSEプログラムの懐の大きさと深さにどっぷり包まれた1ヶ月でした。
この間、私は、9つのホストファミリー宅に滞在しました。やはり思い起こすのは、一緒に過ごした時間、様々な話題に及んだ会話、美味しいものを囲み満面の笑みでの食事……一生の宝物です。友達も沢山できWVが私にとって大事な場所となりました。
淡島団長、マヤ、ヒロ、シホと私の5名でプログラムを完了できたことを本当に嬉しく思います。とてもいいチームワークだったと自画自賛です。チーム全員にも感謝しています。
「国や文化、言葉は違うけれど、私達は同じであるということを実感するのに、GSEは最善のプログラムである」とロータリアンが言われました。そのことを、身を以て感じてきました。そして、自分を見つめ直す機会にもなりました。GSEプログラムで授かったものを、今後、還元、そして循環できればと思っています。
最後になりますが、お世話になりました全ての皆様に心から感謝いたします。今後も、GSEプログラムを始め、ロータリークラブの活動がますます発展いたしますことを願っております。
本当にありがとうございました。