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GROUP STUDY EXCHANGE ROTARY DISTRICT 2650

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GSEご報告案内

ウエストバージニアでの1カ月

上田崇博(京都府乙訓郡大山崎町役場)

 

はじめに

今回のGSE研修に参加するにあたり、以下の通り目標を設定しました。現地滞在中は、常にこれらを心の中に置きながら、自分の行動を決めるようにしていました。

目標

[1]アメリカの広報の現場から何かを得る
[2]積極的に行動する
[3]英会話能力を身につける

理由

[1]アメリカの広報の現場から何かを得る
日頃、広報の業務に携わる中で、町が主催するイベントに参加者が集まらないなど、情報の受け手である住民さんのリアクションの低さに頭を悩ませていました。

魅力あるレイアウト作り、読みやすい文章の書き方、見やすい情報の整理の仕方など、年数とともに自分のスキルは上達しても、住民さんのリアクションの低さは変わらず、「どう頑張ったところで、あまり意味がないのかなぁ」と、ある種の壁を感じるようになっていました。

そのような状況の中、GSEは自分の凝り固まった広報に対する認識をガラッと変えるとともに、改めて広報という仕事に対する自分のモチベーションを高める良いきっかけになるのではないかと考え、これを第1の目標に設定することにしました。
[2]積極的に行動する
海外に約1カ月もの長期間滞在するというのは、自分にとっては初めての経験でした。ですから、GSEに参加するにあたり、最初から、「この機会を職業研修だけの目的で終わらせるのはもったいない!」と感じていました。積極的に行動してこそ、異文化に深く触れることができ、自然と視野も広がってこれからの自分の人生にきっとプラスになるだろうという思いから、この目標を設定しました。
[3]英会話能力を身につける
今回のGSEメンバーのうち、僕を除く3人は長期間海外に滞在した経験があり、出発前から英会話能力も堪能。一方、僕はというと、中学生時代から英語が苦手で、英会話なんてとんでもない、というレベル。でも、「英語が話せたらいいな」という漠然とした夢は以前から持っていました。
英語が話せないという自分の現状を、マイナス点として捉えるのではなく、「これから英語を学ぶことができる」というプラスの点として捉えるためにも、これを目標の一つに設定することにしました。

1 ウエストバージニアという州

アパラチア山脈の山間をゆっくりと走る蒸気機関車。

町中から少し離れると、そこには雄大な自然が広がります。
写真は、ホストファミリーと一緒に早朝の散歩をしているところ。

モーガンタウンからほど近いハイキングコースの終点にて。
この後ろは断崖絶壁です。

約1カ月の滞在で分かった、ウエストバージニアという州がどんなところか、ということについて、ここでは述べたいと思います。

天候
雨が多く、特に北部のウィアートンという町では、快晴といえる日は年間70日程度しかないとのこと。これは、ウエストバージニアの北に位置する5大湖から膨大な水蒸気が発生して雨雲を形成するためだそうです。

雨季は毎年4月頃だそうですが、私たちが滞在している期間は5月に入ってからもおよそ半分以上が雨の日でした。しかし、雨の降り方は日本と異なり、しばらくきつい雨が降ったかと思えば、数分後には晴れ渡ったり、晴れたかと思えば、あっという間に雨が降りだしたり。まるで亜熱帯地域を思わせるような雨の降り方でした。しかし、湿度は低いと思われ、日本(特に京都!)に比べるとはるかに快適に過ごすことができます。

気温は、WV内の地域によっても異なるため一概には言えませんが、総じて京都よりは数度低いと思われます。僕が感じた限り、とても住みよい気候です(冬を体験していないので、なんとも言えないのですが……)。
人種
「白人が人口の約95%以上で、黒人やアジア系の人種はごく稀」という知識を持って出発しましたが、実際に現地に滞在してみると、黒人も多く、またインド系の人種も決して少なくはないという印象を受けました。これは、単一民族国家である日本に普段暮らしているからこそ受けた印象かもしれません。
産業・経済
かつては石炭採掘産業で栄えたそうですが、現在では衰退し、主だった主要産業と呼べるものは存在していないようです。そのせいか、平均世帯所得は全米で最低とのこと。しかし、相反して失業率は低く、特にモーガンタウンの失業率はたったの2%台! 収入は低いものの、貧富の差は少なく、誰もが生活に困らない程度の収入を得ている、ということでしょうか。また、物価が安いことも、人々の生活を助けていると思います。
治安
過去数十年間連続で、全米で犯罪発生率最少を記録しています。経済の話と関連しますが、住民に理由を尋ねてみると「所得が少ないということは、泥棒が仕事をするには向いていない場所っていうことなんだろうね」とのこと。

鍵をかけずに出かける人も多く、レストランでも、かばんを椅子に置いたまま席を立つという光景も。一人で街をブラブラしていても、危険を感じたことはありませんでした。

2 自治体における広報

ボケーショナルスタディでは、ウエストバージニアの自治体を訪問する機会をいくつも設けていただき、また、その内の数箇所では、広報関連の部署を見学させていただくこともできました。ここでは、日本の自治体における広報との決定的な違いがありました。

これは自治体ではなく大学ですが、インターネット上で、
動画を使った情報配信も行っていました。

ブリッジポートの広報担当職員と。
彼の主な仕事はホームページのメンテナンスと
新聞社への情報提供とのこと。
広報誌の作成は、彼の仕事のごく一部に過ぎません。

優先順位アメリカ日本
1位ホームページ広報誌
2位地元新聞ホームページ
3位広報誌地元新聞

自治体における広報手段の優先順位

その違いとは、上記の表に示すとおり、自治体における広報手段の優先順位です。

日本では、広報誌が主も重要な情報媒体であり、大山崎町においても、アンケートの結果、約70%の人が広報誌から行政情報を得ていると回答しています。

一方、アメリカでは、広報誌の位置付けはとても低く、多くの自治体ではそもそも広報誌を発行していないか、発行していても、隔月でA4用紙たったの1枚といったもの。

日本では、ほとんどの自治体が少なくとも月1回、数十ページの広報誌を発行していることを考えると、これは大きな違いと言えます。

そして、広報誌の代わりに、アメリカで主たる情報媒体として使われているのが、ホームページです。

ホームページの内容自体は、日本とほとんど違いはないようでした。CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を用いて、「新着情報」「施設案内」「各課からのお知らせ」などのコンテンツが設けられ、また音声読み上げソフトにも配慮したバリアフリーの構造を有しています。

それではなぜ、アメリカでホームページが主たる情報媒体としての地位を得るに至ったのでしょうか。

自治体職員に尋ねてみたところ、経費削減や紙資源節約のために広報誌を発行していない、または簡素化しているという回答でした。しかし、その前段として、行政が発信する情報はすべての人に平等に届けられねばならない性質のものであるため、「誰もがインターネットを利用できる」という社会的基盤が、必要不可欠な条件として挙げられます。

ここからは、僕の考察になります。

アメリカ・ウエストバージニアでは
家族・ご近所が密接な関係を保ちながら生活している
  ↓
世代を超えて助け合おうという意識が高い
  ↓
高齢者が近代社会(IT)から取り残されていない
  ↓
インターネット利用者の年齢層が幅広く、高齢者も例外ではない
日本では
核家族化が進み、家族間・近所間の付き合いが希薄化している
  ↓
世代間の交流が少ない
  ↓
高齢者が近代社会から取り残され、IT弱者となっている
  ↓
インターネット利用者の年齢層が若年層に偏っている

このような根本的な生活文化の違いが要因となって、日本とアメリカの間でインターネットの普及に差が出てきているのだと感じました。単なる「仕事の仕方」以上の問題を、この考察から感じました。

3 文化の違い

約1ヶ月の滞在期間中、さまざまな場所、さまざまな場面で日本との文化の違いを体感しました。

学校
スペンサーという町に滞在中、ボケーショナルスタディの一環で、地元の高校を見学させていただきました。

驚いたことに、保健室がありませんでした。保健士が、週に1回程度各学校を巡回する程度で、基本的には子どもが体調を崩すと、そのたびに親が迎えに来るらしいのです。これも、「何事も自己責任」というアメリカ人の考え方から来ているのでしょうか。

また、生徒が赤ちゃんを連れて来て授業を受けられる教室もありました。日本では考えられませんね。また、廊下では恋人たちが抱き合ってキスをするという光景もあちこちで見られました。

また、通学手段に車を利用している生徒も多数いました。ウエストバージニアでは公共交通機関の利便が悪く、スクールバスも数が限られているため、車がないと通学すらできないのです。ちなみに、運転免許が取得できるのは16歳からだそうです。
食事
頻繁に食べた食事と言えば、やはりステーキ、ハンバーガーなどの、いかにもアメリカ料理! といったものでした。盛り付けは、基本的にワンプレート。ハンバーガー、サラダ、ポテト、茹で野菜、デザートなど、すべて1つの大きなお皿に盛って出されることが多かったです。

サイズはBIG! ハンバーガー、ステーキなどは、おおむね日本の1.5倍くらいの大きさはあるように感じました。日本人の女性ならば、2人で分けてちょうどいいくらいかもしれません。また、余った料理を持ち帰るドギーバッグも一般的で、余っても持ち帰ればいい、という考え方が定着しているようです。

また、ドリンクのサイズは、料理の大きさよりも顕著にその差を感じました。アメリカのマクドナルドでは、Mサイズのドリンクを注文したところ、日本のマクドナルドのLサイズより大きなものが出てきました。また、カフェでは多くの飲み物がお代わり自由となっており、半分ぐらい飲むと、頼まなくてもウエイトレスが注ぎ足しにやってきます。

朝ごはんなどは立ったままつまんで済ますことも多く、ヨーロッパの、食事の時間を大切にする文化とは大きく違っていました。

それと、もう1つ驚いたのは、ケーキの甘さ。よほど甘いものが好きな人でなければ食べられないほどの甘さでした。また、赤、青、紫などの着色料を大量に使ったカラフルなデコレーションが施されたケーキも多く、日本に比べ、食の安全性に対する意識の低さが伺えました。

ハンバーガーは、大きすぎてかぶりつくのが難しいです。
分解して食べることもありました。

レストランのブレックファーストメニューで注文すると、
巨大なオムレツが出てきました。

ステーキも、レストランによっては大きさを選べるのですが、
一番小さいサイズを注文しても、十分お腹いっぱいです。

肥満
驚くほど多くの人が肥満体型でした。人口に対する肥満の割合は30%以上とのこと!これは、全米でもワースト1、2位を争うほどの高い率です。また、肥満といっても、行動に支障をきたすほどに太った方もかなり多くいらっしゃいました。

この最大の要因は、先述の食事にあると思います。住民の方に尋ねてみても、平均世帯所得が低いために、高額なオーガニック食品には手を出しにくく、安価で高脂肪高カロリーな食事を多く食べる傾向にある、との答えでした。

また、交通手段が車しかないために、ほんの少しの距離も車で移動することが習慣付き、慢性的な運動不足になっていること、周りに肥満の人が多すぎて、肥満に対する危機意識を抱きにくい状況に置かれていることも要因として考えられます。

パーカスバーグ市のロータリークラブの会長さん。
とても大きく、ゆうに僕の2倍以上の体型です。
今はダイエットに取り組まれています。

日常生活
8軒のお宅にホームステイさせていただきましたが、アメリカでは洗濯物を干すという文化がないのか、すべてのお宅に乾燥機がありました。また、お風呂に入っている間にバスタオルを温めるための家電も。便利さの追求が、少し行き過ぎているようにも感じました。でも、ウォシュレットはありません。アメリカ人の衛生感覚に合わないのでしょうか? また、ほとんどの家では靴を履いたまま中に上がりますが、一部、玄関で靴を脱ぐようにしている家庭もありました。

ここにバスタオルをかけて、シャワーを浴びている間に
バスタオルを暖めます。

新型インフルエンザの捉え方
マスクが全国で品切れを起こすなど、日本ではパニックに近い現象が見られたようですが、アメリカ・ウエストバージニアでは、終始、小さなニュースとして扱われていました。

その理由としては、アメリカ国内では死者がほとんど出ていなかったこと、ウエストバージニアでは感染者がゼロだったことなどが挙げられると思いますが、アメリカ人と日本人の考え方の違いが根底にあるのではないかと感じました。

日本では、もし誰かが感染すれば、それを誰かの責任(休校措置を取らなかった学校の責任、政府の対応が遅れた責任、など)と真っ先に考えます。しかし、アメリカ人には何事も自己責任という考えが根付いており、そのため、感染するかしないかは個人の体力の問題、きちんと自己管理ができていれば大丈夫という捉え方が一般的でした。

マスクをしていたのは日本人だけ!

建築物
国の歴史は、アメリカより日本のほうがはるかに長いのに、アメリカの町並みからは日本のそれ以上に歴史感を感じました。アメリカではどんな建物も世代を超えて使うのが当たり前になっていて、築100年も珍しくありません。

個人の家では、何世代にもわたって、必要な箇所を直しながら住み続けるということが多く、新婚の夫婦も中古の家を購入することが多いようです。

新婚といえば新築マンション、という日本の常識とはかけ離れています。また、かつてホテルだった建物がその後マンションになり、今はレストランとし使われているという例や、かつて銀行だった建物が今はカジノやレストランとして使われているという例もありました。

日本人は、売り手も買い手も、一世代限りの使い捨てという感覚で家を見ているのだということに気付かされました。

かつてホテルだった建物が今はマンションになっています。
築年数は100年をゆうに超えるとのこと。

ホストファミリーの両親のお宅。
築およそ100年になるそうです。

選挙
テレビのニュースで伝えられるアメリカ大統領選挙の盛り上がりなどから、アメリカでは投票率はものすごく高いのだと思っていましたが、実情は大統領選挙でも50%程度。

クラークスバーグという市では、直近の市長選挙の投票率はなんと5%以下という結果だったそうです。日本では、選挙への関心の低さがニュースなどで頻繁に報じられていますが、それでも衆議院選挙の投票率は60%ほど。

地方選挙でも、大山崎町を例に見ると、町長・町議会議員選挙は同じく60%ほどです。この事実は、僕にとって大きな驚きでした。

おわりに

今回のGSE研修を通じて、日本での生活では絶対に得ることのできない貴重な体験を山ほどさせていただきました。出発前に自分が設定した目標の達成度を、今振り返って自己採点してみると、

[1]アメリカの広報の現場から何かを得る → 50点
[2]積極的に行動する → 90点
[3]英会話を身につける →60点

位だと思います。

[1]の目標に関しては(これがGSEの主たる目的であるはずなのですが…)、アメリカの自治体ではどのようにして、どんな広報誌を作っているのだろう? という、出発前から最も興味を抱いていたことが満たされず、若干物足りなさを感じる結果となりました。

しかしながら、広報誌に頼らない広報活動という、日本では考えられない情報発信を展開しているアメリカの自治体の広報現場を見て、逆にこれまでの仕事を通じて知らない間に培われてきていた広報に対する固定観念を、良い意味でぐらつかせてくれたと思います。

[2]の目標に関しては、ほぼ達成できたと思います。この報告書では触れていませんでしたが、ターキーハンティングを経験したり、アパラチア山脈を流れる川でカヤックを体験したり。また、ある大学で開かれたフェスティバルに参加して、ライブ会場で夜中まで歌って踊って、しばらく声が出なくなるということもありました。本当にさまざまな経験をする機会が無数にある中で、それらすべてに積極的にチャレンジすることができたと思います。

[3]の目標に関しては、出発前の6か月間、試行錯誤しながら自分なりに精一杯勉強を続けました。それでも、アメリカでの最初の1週間ほどは、なかなか相手の言っていることが理解できず、自分の言いたいこともうまく表現できないということが多々ありました。

それでも、できるだけ自分から英語で話しかけるように努めていると、一週間ほど経ったころから、ゆっくりとした日常会話レベルならきちんと意思疎通ができるようになりました。ただ、日中はグループでの行動が多く、どうしても日本語を使ってしまって英会話を徹底することができませんでした。

そういう意味で、英会話に関してはもっと上達できるチャンスがあっただろうと思います。今後は、この英語を忘れず、さらに上達させていくためにも、地道に勉強を続けていこうと思っています。

最後に、この1カ月の滞在期間中、すべての人がやさしく、親切に僕たちに接してくれました。ホストファミリーの皆さんも、「僕が英語を話したい」と言うと、疲れているにもかかわらず、遅くまで会話に付き合ってくれました。

どのホストファミリーも、本当の家族のように接してくれ、一切不自由を感じることはありませんでした。

この素晴らしいチャンスを僕にくれた、ロータリークラブのすべての関係者の皆さん、そして、ときには親のように、ときには友達のように僕たちのグループをまとめ、率いてくださった“シニア”(淡島さん)、本当にありがとうございました。今後は、この経験で得たすべてのことを、今後の僕の仕事そして人生に活かしていくことが、皆さんへの何よりの恩返しだと考えています。

GSEプログラム、さらにロータリークラブの今後ますますの発展を祈念して、この報告書を終わらせていただきます。

Thank you so much for everything!

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